精霊の守り人 場所はどこで時代はいつ?国や民族は?神はいる?
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出典:シリーズ紹介 | 精霊の守り人・「守り人」シリーズ 公式サイト - 偕成社
2016年3月19日(土)、NHK大河ファンタジー『精霊の守り人』の放送が始まります。
ファンタジーですので、舞台は実際の地理や史実に基づくものではありませんが、
そこは、どんな世界なのか。
時代、場所(地理)、国、民族、神についてまとめてみました。
= 目 次 =
『守り人シリーズ』
『守り人シリーズ』は上橋菜穂子(うえはし なほこ)さんが書いた児童文学。
『精霊の守り人』から『天と地の守り人』までの全10巻の大作です。
NHKはこれを「大河ファンタジー」として22回、実に3年に渡って放送します。
場所(地理)
北の大陸と南の大陸、その間には島々が浮かんでいます。
『精霊の守り人』の舞台は「新ヨゴ皇国」は南の大陸にあった
「ヨゴ王国」の王族が北の大陸に建国した国とあります。
両大陸は距離的にはかなり近そうです。
地中海を隔ててアフリカ大陸とヨーロッパ大陸があるという
イメージに近いと思われます。
国
北の大陸には国境を接して4つの国があります。
出典:「守り人」の世界 | 精霊の守り人・「守り人」シリーズ 公式サイト - 偕成社
東の「新ヨゴ皇国」
主に『精霊の守り人』、『天と地の守り人』の舞台。
南の大陸の「ヨゴ皇国」の皇子が、後継者争いから逃れて移り住んだ国。
都は、海に面した扇状地にあります。
大河流域に栄えたメソポタミア、黄河文明のイメージでしょうか。
新ヨゴ皇国の建国正史
トルガルたちがナヨロ半島に渡った年は、魔物が水に呪いをかけ大凶作であった。ナナイの予言を得たトルガルは八人の武者と青霧山脈の奥の水源へとむかい、途中で三人のヤクーに出会う。息子が百年に一度目覚める魔物に魂を食われたと嘆き悲しむヤクーたちにトルガルは魔物退治を約束し、さらに進んだ。水源の泉にたどりつくと、そこにはひとりの幼子がいた。しかし、トルガルはだまされず剣を抜きはなつと、幼子はたちまち水妖の姿となって襲いかかってきた。トルガルと八人の武者は三日三晩戦い続け、ついに水妖を倒し、その青い血を泉に流した。とたんに稲妻が走り泉の水は天へと昇り、清められた雨となって方策がもたらされた。こうしてトルガルは、〈天の神〉の加護を受けた天子であるとしめし〈帝〉と名のり、〈新ヨゴ皇国〉を興したのである。
西の「ロタ王国」
主に『神の守り人』、『天と地の守り人』の舞台。
広大な平原を領土し、騎馬部隊をもつ国。
モンゴル帝国がモデルのように思えます。
ロタの神話
この世のむこう側には、とほうもなく豊かで、峻烈な雪の峰がそびえるノユーク〈神々の世界〉がある。すべての世界を創造した母なる神アファールはノユークの四季もつかさどり、春になるとノユークから滋養豊かな雪どけ水をほかの世界にも流し、恵みを分けあたえる。しかしこの恵みの川は、同時にアファール神の鬼子、血を好む畏ろしき神タルハマヤが住む川でもあった。昔、ひとりの娘が、異界の川にのってやってくるタルハマヤ神を招く力を得てサーダ・タルハマヤ〈神とひとつになりし者〉となった。彼女はすさまじい力を発揮し、自分の士族をひきいてロタバル全土を征服し、圧倒的な力で支配したという。しかし、神人サーダ・タルハマヤもやがて衰え、初代ロタ王となったキーランによって倒されたと伝えられている。
南の「サンガル王国」
主に『虚空の旅人』、『蒼路の旅人』、『天と地の守り人』の舞台。
北の大陸の半島に都を持ち、海に浮かぶ数百の島を支配する海洋国家。
地中海の海上交易で栄えたフェニキア、日本だと瀬戸内海で活躍した村上水軍が
イメージされます。
サンガルの伝承
ヤルターシ海の底には、〈ナユーグル〉という別世界があり、〈ナユーグル・ライタ〉という民が住んでいる。〈ナユーグル・ライタ〉は〈海の母の子ら〉とも呼ばれ、サンガルの民に魚のわく海をあたえてくれる神の僕であると伝えられている。ときおり、〈ナユーグル・ライタ〉は海上の世界をのぞきにくるが、そのときは五歳ほどの子どもの魂を吸いとり、身体をのっとってしまう。これを〈ナユーグル・ライタの目〉という。〈ナユーグル・ライタの目〉に人の世の悪しきものを見せれば、神の怒りに触れるのではないかと恐れた人々は、その者に目隠しをして、王宮へ導いて最上のもてなしをすることにした。もてなされた後、〈ナユーグル・ライタの目〉になった者は、〈魂帰し〉の儀式により、海へとおとされることとなる。
北の「カンバル王国」
主に『闇の守り人』、『天と地の守り人』の舞台。
ユサ山脈にある山岳国家。
ネパール、チベットといった国がイメージされます。
カンバルの神話
この世の初めは、ただ闇が渦巻いているだけであった。そこから最初の光がはじけた。それが雷神ヨーラムである。ヨーラムは半身が〈大いなる光〉と呼ばれる神の姿、もう半身は、〈大いなる闇〉と呼ばれる神の姿をしている。〈大いなる光〉の神の身体のそれぞれの部分から九つの士族の祖先が生まれ、最後にカンバル〈神の額〉から王の始祖が生まれた。そして、地表にカンバル王国を築いた。一方、〈大いなる闇〉の神からも、九つの士族と王の祖先が生まれ、ユサ山脈の地下に〈山の王国〉を築いたという。また、あるとき洞窟を旅した勇敢な若者が〈山の王〉の娘と出会い恋に落ちた。〈山の王〉は娘を娶りたくば、ヒョウル〈闇の守り人〉と槍で勝負せよといい、若者は見事に勝った。〈山の王〉は若者をたたえ、若者と娘の子孫のために数十年に一度ルイシャ〈青光石〉を贈るようになったという。
それぞれ、地理的には典型的に異なる4つのタイプの国々です。
地域の士族や領主を、帝または王が束ねる王権制の帝国の形態となっています。
民族
「新ヨゴ皇国」は原住民「ヤクー」の住む地に「ヨゴ人」が後から入って建国した
のですが、両民族は平和共存しており、混血が進んでいます。
「カンバル王国」には、人間と牧童とティティ・ランが住んでいます。
牧童は普通の人間より一回り小柄で、
ティティ・ランはオコジョを馬がわりにする小人です。
どちらも元来は、地下世界の住人です。
「ロタ王国」は広大な草原にあり、ロタ人は騎馬民族です。
「サンガル王国」の人たちは、挿絵によると、他国の人より色黒で、
顔だちも南方系に描かれています。
神
それぞれの国にそれぞれの建国神話や伝承があります。
「新ヨゴ皇国」の帝は神の子孫とされています。
さまざまな神の名前は登場するのですが、人格を持つ神が現れて、人と対話したり、
何かを啓示するような場面はありません。
自然界の精霊、亡くなった人の精霊との交流が描かれています。
また、ナユグ(またはノユーク、ナユーグル)と呼ばれ、人間界と重なって存在する
不思議な異界が存在します。
ナユグの神や精霊との不思議なかかわりが起点となって、物語が展開していきます。
ナユグについては、こちらをご覧ください。
時代
交通手段、道具から時代を推測してみます。
槍、剣、手裏剣、吹き矢、弓という武器が使われていて、鉄製です。
船に動力はなく、帆船です。
武器も含めて、火薬は使われていません。
現実世界では、鉄の武器、車輪とも紀元前から歴史に登場します。
火薬が発明されるのは中国の唐代(7~10世紀)です。
こういった事情と、王権制の国家がいくつも存在する状況からすると、
『守り人シリーズ』の時代は現実の歴史でいうと、
紀元前から12~13世紀ぐらいまでにあたりそうです。
まとめ
『守り人シリーズ』原作者の上橋菜穂子さんは、児童文学作家でありながら、
文化人類学者でもあります。
物語に登場する国の地域性、神話・伝承、民族性が、各々に特徴づけられており、
豊かな物語を創造する舞台となっています。
文化人類学者の方ならではの魅力と感じます。
不思議な異界ナユグとの関わりが描かれた各々の国の神話や伝承は、物語を生む種
となっています。
神話や伝承の中で語られるナユグの神や精霊たち。
それは時として、数百年の年月を経て再来し、主人公たちと遭遇し、物語が展開して
いきます。
ナユグが人間界にもたらす不可思議なできごとを、主人公たちが解きすすんで行く
のは、ワクワクします。
不思議なナユグの世界や呪術が登場する『守り人シリーズ』ですが、その一方で、
人間臭さも濃く描かれています。
主人公、短槍使いのバルサは、30歳の女用心棒。
「新ヨゴ皇国の」皇子チャグムを助け、守って行く母のような存在です。
作者の上橋菜穂子さんによると、
この物語の草稿を担当の編集者さんに見せたとき、
「あのね、児童文学って、
子どもが主人公に心を乗せていける物語なのよ。
子どものお母さんみたいな年代の女を主人公にして、どーする!」
と怒られました。
と言っています。
バルサは、政略により王の主治医だった父を殺された過去をもちます。
児童文学の主人公にしては、血なまぐさい設定です。
また、国内、国家間の政治的な駆け引きや陰謀もストーリーに出てきます。
「サンガル王国」では、それぞれ島の領主に王族の女性が嫁いでおり、
女性王族が政治を握っていたりします。
人間の愛憎、欲望、政治的陰謀も語られており、
こういうところが、児童文学でありながら大人まで引き付ける魅力のようです。
ドラマを見て、先を知りたいと本を手に取る方もいらっしゃるかも知れません。
読み切るのがもったいないと思いながらも、きっと一気に読み切ってしまうと
思います。