X線天文衛星 なぜX線なのか、何が分かるのか、分かりやすく簡単に説明してみました
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H2AロケットでX線天文衛星「ASTRO-H」が打ち上げられます。
何が分かるのか?
分かりやすく簡単に説明してみたいと思います。
X線とは
X線は病院のレントゲン撮影、あるいは空港の手荷物検査にも使われています。
これは、X線の「透過性」を利用したものです。
X線が人体やバッグを透過したところは黒く写り、透過しない部分は白く写ります。
出典:X線天文学の世界 | ASTRO-Hの挑戦 | ASTRO-H 次期X線国際天文衛星
電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線はすべて電磁波の仲間です。
後の方が波長が短くなります。
波長が短いと、
「屈折しにくい」
「透過力が高い」
「エネルギーが高い」といった特徴があります。
なぜ宇宙に打ち上げるのか?
波長が40m以上の電波は電離層で反射されて地上に届きません。
また、波長が3cm以下の電波は大気中の水分子や酸素分子に吸収され、
地上に届きにくくなります。
透過性が高いX線ですが、波長が短いため、
厚い大気に阻まれて地上までは届きません。
そのため、X線の観測は宇宙空間で行うことが必要となります。
地上の電波望遠鏡は3㎝~40㎝の波長を観測しています。
宇宙の現象と電磁波
物体は温度に対応した波長の電磁波を出しています。
つまり
「すべての物体は光っている(電磁波を出している)」
と言えます。
温度が低ければ波長の長い電磁波を、
温度が高ければ波長の短い電磁波を出しています。
天体が出す電磁波の波長が分かれば、その温度(エネルギー)が分かります。
宇宙には、絶対零度から数億度という超高熱までさまざまな現象が存在します。
それらを観測するためには、その温度に対応した電磁波を捉える必要があります。
数百万度から1千万度という高温にある物体はX線を出していて、
X線を観測することで、その状態を捉えることができます。
絶対零度:-273.15 ℃(温度はこれを下回ることがない、最も低い温度)
X線を出す天体
巨大な重力や爆発エネルギーを伴う高温の天体(現象)がX線を出しています。
X線天文学の世界 | ASTRO-Hの挑戦 | ASTRO-H 次期X線国際天文衛星
〈活動銀河核〉
銀河の中心1%程度のコンパクトな領域から、
ほぼ全ての波長域の電磁波を放出している天体です。
〈銀河団〉
数百個から数千個規模の銀河からなり、高温のガスがX線を放射しています。
〈超新星爆発〉
巨大な星が、長年燃え続けた末に大爆発を起こす現象。
突然新しい星が誕生したかのように輝くため「超新星」と呼ばれます。
実際は死の瞬間のきらめきなのです。
〈ブラックホール〉
ブラックホールは、極めて高密度かつ大質量の天体。
その強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができません。
しかし、回りにガスがあると、強い重力のため、ガスは激しく回転します。
このとき、膨大な摩擦熱によってこの円盤の中心近くではガスの温度は
数百万度から1千万度に達し、X線で明るく輝きます。
このX線を観測することで、ブラックホールを間接的に見ることができるのです。
現在、分かっているだけでもX線を出す天体は数万個が知られており、
宇宙に存在する90%以上の物質はX線でしか観測できないとも言われます。
宇宙を理解するためには、X線による観測は無くてはならないものなのです。
X線天文衛星ASTRO-H - 熱い宇宙の中を観る JAXA (宇宙航空研究開発機構)
まとめ
今回打ち上げられるX線天文衛星「ASTRO-H」は6基目です。
先代の「すざく(ASTRO-EⅡ)」は、目標寿命の2年を大幅に超える10年に亘って
観測を続けました。
・銀河団の外縁部の観測に初めて成功
・宇宙初期に多数存在していた塵やガスに深く埋もれたブラックホールを発見
・恒星質量ブラックホールに落ち込むガスが最後の瞬間に10億度以上に
急加熱されることを発見
などの成果を上げています。
「ASTRO-H」は「すざく(ASTRO-EⅡ)」の10~100倍の高感度観測が
可能となったそうです。
宇宙の神秘をさらに解明してくれることでしょう。
楽しみです。